PEEPING TOM

覗き見野郎

東京、世界中から様々なモノがやって来る世界経済の要所。そんな日本国の首都には様々な人種が全国津々浦々からやって来る。夢を追うもの、仕事のため、何かから逃げるため……。人種の坩堝、東京に全てが同じ理由の人間を探すのは至難の業。

そもそも俺の場合は、それを明らかに出来るような趣味ではないのだがね。
俺は上田栄吉。年は４０を過ぎた。独身を貫いている。独身を卒業する予定はない。今後もないだろう。終生独り身だろう。仕事を終えて、スーパーで必要な食材を買うのも板に付いた。そこら辺の新米主婦よりも目利きには自信がある。
忙しくない限りは家に帰り自炊をするように心掛けている。以前は外食中心で足りない栄養素はサプリメントで補っていたが、自分の好きな料理を好きな時間に好きな量だけ食べることが出来る自炊には叶わないことに気付いた。それ以来俺は専ら自炊派だ。最近は玄米に凝っている。味噌汁も市販の出汁は使わず、乾物から出汁を取る拘りぶりだ。
食事はソファにどっしりと腰を据えて、夕食時にはお酒を片手に食べる。徐にテレビのスイッチを入れ予め撮ったDVDを再生する。一番楽しみな時間だ。
映画でも好きなテレビ番組でも、もちろんいかがわしい類のビデオでもない。
その内容とはあるマンションの一室を盗撮したDVDなのだ。