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二
ここは京の都の鴨川ぞいにある信太従三位屋敷である。信太家は、古い陰陽師の家柄で、時姫はそのただ一人の後とりだ。
かつては御所に足しげく通うこともあったが、時姫の父親が亡くなってからは参内もなくなり、現在は閑散としている。
ところが近ごろ、たった一人の時姫に御所から執拗な参内の命令が出るようになった。
命令を出しているのは〈御門〉であった。その命令に姫は、今まで曖昧な返事を繰り返すだけで、じっと屋敷内に留まっている。
〈御門〉の狙いは信太家に伝わる〝鍵〟である。しかし時姫は、父親から「決して〈御門〉に〝鍵〟を渡してはならぬ」と遺言されていた。そのため、時姫は〈御門〉の命令を拒否していたのだ。
〈御門〉──。それは謎の存在だ。御所にいることは確かだが、誰もその姿を見た者はいない。しかし〈御門〉の命令は絶対的で、時姫一人だけが逆らっている。
源二は、もともと北面の武士であった。それも、奇門遁甲を能{よ}くする特殊な一団に属していた。
信太従三位が御所に参内していた当時、従三位の目に止まり、懇望されて屋敷に入り込んだ。
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