第3章 夜が明けるまで

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 友弘が心の中で言い訳をしながら、まだ名も知らぬ理恵とフォークダンスしている頃、それを知っていれば情け容赦なく、冷やかしたであろう人物たちは、コンビニで待機していた、彼らが待っていたのは、警察の到達であったのか、友弘の帰還であったかは永遠の謎となってしまった。ただ言えることは知弁学園の坂道に野犬に襲われている女性の姿が見えなくなったことと、輝也が呼んだ警察がまだ来ないために、一見すると何事もなかった様な平穏さを取り戻していた。  徹はタバコを蒸しながら徐々に高まる不快感をこらえていた。それは彼があの車を買ってもらってから、ゼロヨンに参加していたからである。  ゼロヨンとは、毎週土曜の深夜に和歌山港付近の広くて長い公道で行なわれており、当然のごとく付近の住民からの苦情により警察が来るのである。  そのたびにゼロヨン族たちは猛ダッシュで四方八方に四散していくのだが、中に運の悪い人はパトカーに捕まるのである。  幸運な事に徹はいままで捕まったことはないものの、彼の車のナンバーは警察にチェックされ彼自身の名もブラックリストに堂々の殿堂入りを果たしていたのであった。  だからこそ、警察が来るという事実は彼にとっては恐怖以外のなにものでも成り得なかった。早くこの場を脱したい。  徹の心の叫びに救いをあたえたのは輝也であった。 「帰ろう。」きびつを返し、友弘の家の方へ歩き始める、その行動に残り4人は無言で同意した。  もうすぐ警察が来るのだから、彼らに任せておけばいいんだ、いまさら自分がしゃしゃり出ても、他のみんなはきっと安全なこの場を動こうとはしないだろう、つまり自分一人が危険な目を侵して友弘達を助けに行っても雪山で二重遭難するようなものだ、いや三重遭難か。
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