プロローグ

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 今のは何だろう?、鳥にしては大き過ぎたし、飛行機がこんな低空飛行する訳が無い、第一飛行機ならもっと爆音が轟くはずだ。妻の顔を見やったが妻は気付かなかったようだ。  2人を乗せた車は渋滞で数珠繋ぎのまま、長いトンネルに飲み込まれていく。 トンネルの中は、車の排気ガスが充満し、それを吐き出そうと屋根に吊された何台かのファンが稼動してその音と、各車から発せられるエンジン音がトンネルの壁や屋根に凄しく響きわたる。この時トンネルの屋根に大蛇の如く亀裂が走っていることに何人が気付いていたのだろうか。  「騒音がひどいので。」を言い訳に、岡原は車の屋根を閉めた。範子は落ち着いた様子でダッシュボードから”るるぶ和歌山”を取出しページをめくる、それを見ていた岡原はそっとルームランプを点す、  トンネルは緩やかな右カーブを描き出口も入口も見えなく、オレンジ色のライトが長い車の列を照らしてその光景はまるで遊園地のアトラクションを思わす、範子は目当てのページを見付けたらしく「このレストランまだやってるね。」と本を差出す。  もう25年ぐらい前のこと、範子は岡原に連れられてデートをするのはもう何十回目になるだろう。いつもと同じバイクでいつもと同じ道そしていつもと同じ会話、しかしこの日はいつもと同じではなかった。 何がどう違ったのか?     
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