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まっしろなせかい
目が覚めたという感覚はなかった。
気がつけば、真っ白な空間に青年はひとり、ぽつりと立っていた。
上にどれだけの空があるのか、前後左右にはどれだけの余裕があるのか、全くわからないほどに、完全無欠に純潔。部屋と呼ぶには余りにも得体が知れない。
移動しようにも足が動かない。この足を少しでも動かしたら、そこには地面と呼ばれる構造が無いのではないか。そう思えるほど、自らの足下も真っ白だ。
色を持っているのは己の身体と、その身体を包む服。その服装は、いわゆる「高校の制服っぽいブレザー」だ。上は紺色、下はグレー。ネクタイは黒とグレーのストライプ。当たり障りの無い至ってシンプルなブレザーを、着崩すことなく身につけていた。
頭と髪を触ってみる。ごわつきは無い。しかし派手な色だ。鮮やかな赤。主人公カラーとでも言うのだろうか。
青年はわずかな息苦しさを覚え、少しだけタイを緩める。ついでにシャツの袖ボタンも外した。幾分かは楽になって、少しだけ上体を反らした。
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