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「ううん、いいよこれで。すごくいい写真だと思う」
「でも……」
恥ずかしさで夕日に負けないくらい顔を赤くした青に、彼女は「大丈夫よ」と優しく微笑んだ。その顔はどことなく姉に似ていると青は思った。
彼女は青の隣に並ぶと、二人が見やすい位置に携帯電話を持って写真を見せてきた。
「普通はね、写真を撮ってって言われたら、人を中心に撮ると思うのよ」
青はハッとする。たしかに言われてみればそうだった。写真の彼女は中央よりやや右にずれていた。景色ばかり見ていたせいだ。途端に申し訳ない気持ちが湧き上がってきたが、彼女はそれをなだめるように穏やかな口調で続ける。
「でも、この写真はそうじゃないでしょう? 人と景色がちゃんと調和しているというか、そうーー写真というより、一枚の絵って感じね。素敵だわ」
それはさすがにお世辞がすぎるだろう。別に特に意識などしていなかったのだから。しかし、だからこそ戸惑った。なぜなら青は、彼女が本心からそう言っているのを感じたからだ。
青の戸惑いもつゆ知らず、彼女は写真を眺めながら朗らかに言った。
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