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それ以降、青と美姫はたまに連絡をとり合うようになった。
ぽつぽつとだが青は色々な話を美姫にした。今度はどこへ行ってきたとか、そこで何をしてきたとか、学校でどうのこうの。時には少しこみ入った話もしたーー家出を繰り返す理由や、父への不満をうっかり吐露することもあった。美姫には人から話を聞き出す不思議な力があるらしい。青は自分の内面のことを人に話すのは本来得意ではなかったはずだが、美姫にはなぜかすんなりと話すことができた。
逆に、青は美姫のことをあまり知らない。
知っていることと言えば、隣駅の街に住んでいることと、高校三年生であること、それからいつも本心で話をする人であること。それくらいだ。
しかし、青にはそれで十分だった。人を信頼するのにそんなに多くの情報を必要とはしない。少なくとも青にとってはそうだった。
そしてそんな彼女からある日、次のような連絡があった。
ーー今度の冬休み、もし家出するなら私の別荘を使わない?
青は首を傾げた。別荘? うまく飲みこめなかったので詳細を聞こうとしたが、詳しくは教えてくれなかった。それは見てからのお楽しみに、らしい。というよりすでに決定事項になっていた。青はため息をつき、半分投げやりな気持ちで『仰せのままに』と短く返した。もう半分は、純粋に楽しみな気持ちではあったけれど。
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