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「そういえば青って料理できるの?」
「うーん、まあ、それなりに。上手くはないけどね」
母の帰りが遅くなる時は夕飯を作ることがあったので、その点では問題なかった。父も紫も料理はからきしだったからだ。食材はあらかじめ母が用意してくれるので、簡単なものであれば作れるには作れる。
「でも、ここって料理しても平気なの?」
素朴な疑問だったので質問すると、もちろん、と美姫は答えた。
「もちろん内緒よ。見つかると怒られるから気をつけてね」
誰に怒られるのかは知らなかったが、青は一応気をつけることにした。
ちょうど日が真上にきた頃合いに料理を作り終えて、美姫が用意してくれた二人分の弁当箱と水筒にそれぞれ詰めた。そこまではよかったが、青は嫌な予感がした。美姫が底に新聞を敷いたダンボールに、使ったフライパンや片手鍋をせっせと入れ始めたからだ。それに洗剤とスポンジと白い布巾も。
「ねえ、洗いものってもしかして」青は窓の外を見る。「外の炊事場でやるの?」
日は照ってこそいるが寒いことには変わりない。このメトロポ荘から炊事場は地味に距離が遠いし、その水の冷たさときたら想像するだけで青を震え上がらせた。
しかし美姫はにこりと笑って、ダンボールを青にぽんと寄越した。
「さ、ちゃちゃっと洗ってランチにしましょ」
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