おみやげとおみやげ

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「補充でもされてたんですか?」  数が合わない回答に、苦笑混じりに返したら。 「そ、補充されてたんだよー。びっくりした。あたしの時は普通に教室になってた部屋が多目的室っていうの?学年集会とかに使う部屋になってるから、放課後そこに首吊り死体が揺れてるとか」 「……ブランコから移籍したんですかね、首吊りさん」 「その発想はなかった」  けらりと笑い、音葉は最中の個包装を剥くと一角をさくりと噛んだ。 「……口の水分持ってかれるから、喋りながら食べるもんじゃないね」 「でも美味しいですよ」 「それなら何より。……で、だ。あたしが卒業してからハルちゃんが入学する十年弱の間に何が無くなって何が新規参入したかを突き合わせてみようと、イチから全部聞かせてもらったんだよね。無くなった噂は、ブランコと、焼却炉と、屋上。新しく入ったのは、多目的室と、プール」 「三つマイナスの二つプラスなら、ひとつ足りなくないですか」 「七つ目は、ベタなんだけど、七つ全てを知ってしまうと別の世界に連れてかれる……ってやつになってたんだ」 「なるほど」  かつ、かつ、かつ。不意に音葉がパンプスの踵で床を叩きだす。 「誰が足したんだろうね」 「へ?」 「いや、だから、新しい七不思議。七つ全てを~っていうのは数の帳尻を合わす理由づけとして誰がともなく言ったのは分かるんだよ。残りの二つがね、誰が言ったんだろうって」 音葉の喉が上下したのは、もなかに口の水分が奪われたからであっただろうか。 「加賀ちゃん、噂話が広まる必須条件はなんだろう」 「広めたくなる話、だからですか」 「禅問答だなー。ま、言わんとすることは分かるけど。質問を変えようか、じゃあ、広めたくなる話って何?」 「話したくなった、から?」 「なんで?」 「共感、できた……から?」  かつん。音葉の踵が刻んでいたリズムが停止する。
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