おみやげとおみやげ

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「そう。火のないところに煙は立たなくても、ヒトは土煙を煙と見間違えた時に、幻想の火をを見てしまう。事故防止のためにいつも鍵がかかっている屋上を、異界に開く扉と思ってしまう。黄昏時の薄暗い校庭に見る揺れるブランコは、首吊り死体の揺れる姿と重ねてしまう。ゴミを燃やし尽くす焼却炉に、かくれんぼで入ってしまった悪ガキの姿を幻視してしまう。そんなもの、存在しないのに、『ありそう』という想像力が、学校という生活共同体に怪異を創造してしまう」 「……理解はできますけど」  これが怪異ではなくクラスの誰かになれば、いじめにつながる。社会においては集団ヒステリーになりうる。よくある話だ。そのように学校の怪談を解きほぐしたことはなかったけれど、納得と理解には至れる。 「だからさあ、物理的に失われてしまった七不思議を補充するには『それっぽい』話を作って、それを学校中に膾炙させる必要があるじゃない。十年間で選手交代を成し遂げるには」 「はぁ、まあ、そうですね。からかうのが好きな高学年さんが部活とかで話してぶわーって広めたんじゃないですか」 「論理的に考えればそうだろうけど、こんな考えはどうだろう?」 「どんな考えです?」 「『補充されること自体が七不思議』って思ったんだよね」 「すいません、どういうことですか?」 「察し悪いなー。七つにし続けること自体が七不思議のひとつなんだよ。学校の構造が変わろうと、オカルトが七つあり続ける時点でおかしいでしょ」 「……だとすると、先輩、七不思議全部知ったことになるから、異界に連れて行かれちゃいますよ」 「うわ、そうなっちゃうか」 「ま、噂ですけどね」 「そーそー、そんな簡単に怪奇現象に遭遇するとかナイナイ」
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