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ガハハと豪快に笑いながら「じゃ、またよろしく」とマスターに手を挙げ裏口に向かって歩き出す店主の背中を見た龍吾は、閃きかけた〝何か〟を思い出した。
ドアが閉まった音がして、龍吾は慌てて後を追った。裏口のドアを開けると、店主はまだそこで空ケースの整理をしていた。
「オヤジさん!」
「おう、なんだ龍ちゃん」
思いがけず声を掛けられ店主は驚き、顔を上げた。龍吾は辺りを見回しながら彼に近づき小声で話しかける。
「オヤジさん、確か鈴蘭にも酒卸してたよな?」
「断る」
「……俺、まだなんも言ってねーけど?」
顔も見ず、用件も聞かずに即答した店主に龍吾はムッとした。
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