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帽子を目深に被った少女が凛花の背後から声を掛けた。
凛花は位林と気付いたが「ありがとう」とだけ言って受け取った。少女はそのまま何も言わず、目も合わせずに走り去った。
位林の後ろ姿に、凛花は込み上げる想いを必死に堪え心の中で何度も呟いていた。
ありがとう、ありがとう、位林ちゃん!
キャバ嬢達の賑やかな話し声で溢れる控室で、凛花はメイク用の鏡の前に座り、渡されたシガレットケースをそっと開けた。
数本入ったタバコの下に紙が押し込まれていた。
周りを伺いながら、震える手でその紙をそっと引き出した。
自分が入れた紙だ。
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