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『私、本当は笹山凛子(ささやまりんこ)っていうの』
あの日の空港の出発ロビー。
保安検査場の入口で別れ際、凛花が言った。
「ささやま……りんこ……」
凛花の手を握ったまま龍吾は繰り返すように呟きその名前を胸に刻み込む。
彼女は頷き微笑んだ。
「もう……ずーっと前に捨てた名前。
また……戻れる日が来るなんて夢にも思わなかったわ……。
……龍吾のお陰よ」
「……俺だけじゃ……」
ううん、と龍吾を見上げる凛花は小さく横に首を振っていた。
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