再びの来訪、そして新しい冒険者の誕生

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再びの来訪、そして新しい冒険者の誕生

 再びキールとナパトの二人がギルドへやって来たのは、あの大騒ぎから四日後のことだった。 「あら、いらっしゃい」 「こんにちは、先日は失礼いたしました」 「これはご丁寧にどうも」 先日の騒動の印象とは打って変わって、礼儀正しい態度で以前の件を謝るナパト。 そして事務員が用件を訊ねようとした矢先、ナパトの隣にいたキールが口を開く。 「ギルドのねーちゃん、また来たぜ! 今日こそ登録するから、ばっちり依頼の紹介よろしくな!」 「こらキール! なんて口の聞き方してるの!?」 こちらはナパトとは違い先日の件を詫びることもなく、開口一番出てきたのはそれだった。 すかさずナパトからキールに叱責の声が飛び、すぐに事務員へと頭を下げてくる。 こうして見ると生意気な弟とそれに手を焼く姉、みたいにも見えて微笑ましく思えた。 「登録しに来たって事は、今度はちゃんと保護者さんを連れてきたのかしら?」 「もちろん!」 からかう様に言う事務員に、キールは胸を張って頷く。 そして入口に一人の男が姿を現した。 「すいません、師匠」 「なーに、良いってことよ。こっちのギルドに挨拶もしておきたいしな、これから世話になるんだし」 「師匠! 早く早く!」 「キール! 師匠にお礼を言うのが先でしょ!」 「あ、貴方は……!?」  キール、ナパトとの賑やかなやり取りをしながら近づく男を見て、事務員は思わず息を飲んだ。 その男が、広く名の知れた凄腕の冒険者テンベラだと気付いて。 「あー、すまないな。先日はうちのバカ弟子がお騒がせしたみたいで」 「え、あ……いえ、そんな、お気になさらずに!」 飄々とした口調で詫びながら頭を下げるテンベラに、有名人を前に緊張した事務員は恐縮し、声も上ずってしまう。 そんな様子を眺めるキールとナパトも、少し得意げだった。 「それじゃ改めまして、今日からこっちで世話になる。テンベラだ、よろしく」 「こここここ、こちらこそ! よろしくお世話させていただきます! あっ、わわ、わたくし、このギルドの業務全般を担当するネーマです! よよよ、よろしくお願いします!!」 「お、おいおい、落ち着きなってネーマさん……」  テンベラの名を知らぬ者はいない。 そうとまで言われる相手を前に、しかも直接その本人から挨拶されて舞い上がるネーマに、テンベラもたじろぎながら声をかけた。
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