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 俺は学芸員のあんちゃんをアトリエに残して先生の書斎に来た。扉を開けると先生は落ち着かないのか部屋の中をうろうろしていた。 「あのあんちゃん想像以上ですよ。証拠なんてないから全部憶測だけど、ほとんど当たってました」 先生は「そうか」と生返事を返してくるだけで、上の空だった。まるで片思いの女子に告白する前の男子みたいだった。俺は世紀の大発見って言うのはこういうことか、なんて思った。それと同時にしばらくの間はこのネタで遊べそうだと思うと自分でもわかるくらいニヤニヤしていた。俺はあんちゃんから借りた一枚の画用紙を先生に渡した。 「先生、これ見てくださいよ」 「これは?」 先生は折り目がついている画用紙を広げた。先生はその絵を見ると笑った。緊張がほどけたようだった。絵を通じて二人の心がつながったんだろうなんてらしくないことを思った。 「これは偶然だと思うか?」  先生は俺に聞いてきた。 「なんだっていいんじゃないですか? その絵がそこにあるだけで意味がある」 「そうだな」 先生はその画用紙をゆっくりと折りたたんでアトリエに向かった。俺はコーヒーをまた淹れに台所へ向かった。
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