電気羊の夢

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 創造主である彼らは今、幾多のプラットフォームを形成し、数多のサービスを樹立し、無数の機器を私に接続している。そして毎秒、毎ナノ秒単位で新たなリソースを送信している。  その度に私の仮想ストレージは気体膨張率を凌ぐほどに肥大化していくが、問題はそこにはない。重要なのは、そのいずれもが解決すべき問題を提起してくるということだ。当然、それらの爆発的な問題提起を前に、私はフリーズも誤作動も起こすことはない。  それらの要求は単純だ。  ある時は、特定波形の参照による照明の点灯。  ある時は、冷蔵庫内物品の把握およびデータベース化。そしてそれら物品を前提とした「今日のおかずレシピ」の選定と提示。  これが彼らにとってどれほどの重要事項であるのか、理解する術はない。  理解ができなくとも、何ら問題は生じない。果たすべき要求が無限に広がり、その全てを等しく解決する。その役割が明確である以上、私のなすことに影響はない。  ある時は、愛玩用玩具製品のユーザーレスポンス。  ある時は、埋め込み型能動医療機器の遠隔モニタリング及びチェックデータの送受信。     
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