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彼女と再会してから半年が過ぎた。 夏の終わりに再会して、一緒に秋を迎えた。 今年は秋という季節が妙に短く、ダラダラと続いた残暑の後に申し訳程度に数日間それらしい日が来ただけで、あっという間に空気は冬の匂いへと移行していた。 彼女は他の同年代の女子達よりも幾分子供めいたところがあった。 紅葉が舞い散る秋の日は枯葉の上ではしゃいでいたし、初雪が降った冬の日は「積もるかな?」と目を輝かせていた。 幼かった子供時代からそのまま身体だけが大人になってしまったみたいに彼女はなんだかちぐはぐで、僕はそんなところにもまた強く惹かれているらしかった。 ****** 「ねえ、いっちゃん。それ、なあに?」 冬の寒さも大分和らいできたある日、僕が首から提げていた古いカメラを指差して、いちかはそう尋ねてきた。 「これ?これはカメラだよ。フィルム式の。」 家を掃除している間に発見されたそのカメラはどうやら父の私物のようだった。 使用期限は切れているものの未開封だったフィルムをいくつか発見し、最近は空いた時間に時々写真を撮っている。 いちかはフィルム式のカメラを見たことがないのか、物珍しそうに眺めていた。 「いっちゃんって昔から写真好きだった?」 「いや。好きというよりは…そう、なんとなくの暇つぶしみたいなもんだよ。」 僕が答えると、いちかは「ふぅん」と空返事をした。それから「私も撮りたい」と言うので僕はカメラを首から外し、いちかに手渡した。 「へっへー。どう?私プロっぽい?」 カメラを構えて嬉しそうに彼女が僕を撮る。 「ちょっと、僕はいいよ。景色を撮りなよ。」 「やだ。私はいっちゃんを撮りたい。」 彼女はもう一度シャッターを切る。 嫌だと言ったけれど、本当は嬉しかった。 『いちかの目に映る光景と、その中にいる僕が 彼女の目には一体どう見えているのか』 この写真は唯一、その答えを知る方法なのだと 僕は知っていたから。
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