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ぎゅっと握った手に力を込めて、マルクも笑みを浮かべた。まさか本人から声をかけてもらえるとは思っておらず、高揚した気持ちを抑えることが出来ない。
「ではマルクくん、少しお茶でもどうだい」
有無を言わせぬような問いに、マルクは頷く以外の答えを持ち合わせてはいなかった。二人はカンバスの前から立ち退き、画廊を出て小さなカフェへ足を運んだ。テーブルを挟んで向かい合うように座った二人。真ん中には互いの頼んだビールが置かれている。しかしどちらも手を付けようとせず、細長いグラスがその空気にじっとりと汗をかいた。
「新しい芸術と言っても、やはり未来の芽を潰すことは決してあってはなりません」
「そうだ。そうだとも」
「なぜ新しく、今までになかったからと言って非難されなければならないのでしょう」
「やはり新しいものは擁護すべき存在だ。それが今までとは比べ物にならないものだとしても」
「そうです!」
ダンッ、とテーブルに強く叩き落したマルクの拳の隣でビールの泡のみが残ったグラスが汗をドッと流した。カンディンスキーは彼の強く握り締められた拳からマルクへと視線を移し、彼の目をじっと見つめ、頷く。それからにわかに立ち上がり、彼に手を差し伸べた。
「やはり私は君を招待したい。どうだ、君も協会の会員にならないか?」
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