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「自分達の論考を本にしてみないか」そう言い出したのは果たしてどちらだったろう。どちらであったとしても、どちらも同意したことであった。自分の意見をより深くしたい、より多くの人に知ってほしい。そう感じたことに変わりはなかった。
「本の名前はどうするんですか?」
日の高い昼、マルクはカンディンスキーを家に招いていた。ランチとビールをテーブルに置き、出会った時と同じようにテーブルを挟んで向かい合って座っていた。ビールを飲みつつ、マルクは彼に尋ねた。
「それはもう決まっているさ」
一枚の紙を取り出したカンディンスキーはふと窓の外を見た。
「今日は晴れているな」
つられてマルクも外を見遣ると、そこには青空が広がっていた。雲に隠れることのない太陽に照らされた町が輝く。そうですね、と眩しそうに目を細めたマルクは息を吐くように呟く。
「綺麗な青空です。…でもそれがどうかしたんですか?」
その言葉にカンディンスキーは笑った。
「私達は青が好きだからね」
外から手元に出した紙へと視線を戻す。マルクもこちらへと視線を戻したことを皮切りに、折りたたまれた紙を広げる。
「君は馬が好きだろう? そして私は騎手が好きだ」
眼鏡の奥の瞳が楽しそうに弧を描く。マルクはじっと彼の広げた紙を見つめ、目を丸くする。
「青騎士。…どうだい、いいだろう?」
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