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満面の笑みを浮かべてビールを煽るカンディンスキーに、マルクは大きく頷いた。そして瓶を持つ。カンディンスキーの方へそれを向けると、彼もまた瓶をマルクの方へ傾けた。かつん、と鈍い音が鳴り、二人は笑い合う。簡素な部屋に降り注ぐ太陽の光が二人を祝福していた。
それから数日、どのような内容にするか、どのようなものを題材にするか、などといったことを二人で考えていく。それと同時に、新芸術家協会第三回展へと向けて制作を始めていた。その中で二人の作風はだんだんと抽象化していく。元々抽象画を描いていたカンディンスキーの絵は更に度を増し、線で表現するようになった。マルクの絵もまた、それにならうようにどんどん抽象になっていく。
そんな二人の絵を良く思わない者は多くいた。元来、抽象画というものは否定されてきたのだ。写実的に、見たものを見たまま描くべきだという声の方が多く、見たものを抽象化する彼らの描き方は非難され続けていた。それが受け入れられるべき存在であった新芸術家協会でさえも、いつしか抽象化し、大胆な絵を描くマルクやカンディンスキーを非難するようになった。
「こんなのは間違っている」
憤りを隠そうともせず、自分の身長を優に超える高さで、どれだけ自分が並んでも足りないほど幅のあるカンバスを見上げながらマルクは呟いた。その斜め前で脚立を跨いで座り、カンバスと向き合うカンディンスキーは苦笑を漏らす。
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