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何をやっても上手くいかないことにやり場のない苛立ちを覚える。どうしようもない怒りにマルクは手を拱いていた。自制心などはとうの昔に消え去っている。いつの間にか日が昇っていたのだろう、部屋に差し込む日差しすらも煩わしくて、彼は部屋をカーテンで閉め切ったままにしていた。
「やはりお前には無理だったのだ」
頭の奥の奥で父の嘲笑う声が響き、マルクはテーブルを叩く。マルクは込み上げる激情に身を任せて花瓶を床に叩きつけた。行き場のない怒りが脳を支配する。
「お前には才能がない、私の言うことも素直に聞けないお前が画家になれるとでも思っていたのか」
父の厳しい言葉が脳内に反響する。うるさい、と頭を振るも、父の表情や声は消えてはくれない。もう何をやっても上手くいかない。全て父のせいだ。そう思わずにはいられないほど、マルクは追いつめられていた。
画家の父の元で育つも、父はマルクを認めてくれることは一度たりともなかった。そんな父の元を離れてもなお、その呪縛から逃れることは叶わない。
父から逃れることも考え、ドイツからパリに渡って早二年が経った一九〇五年。多くの芸術に触れる為に国を跨いできたものの、自分の芸術が父の虚像から逃れることは出来なかった。どれだけの時間を費やしても、どれだけ父から離れようとも、父の存在がマルクの中から消えることはない。自分を蔑むあの目はずっと彼を空虚の中から見つめていた。
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