Franz Marcという男

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 彼のずっしりとした言葉にマルクは目を丸くし、それからカンディンスキー同様に立ち上がる。その顔にはもう驚きはなく、喜びで満ちていた。 「もちろんです! ぜひ、入会させてください!」  カンディンスキーの手を握り、これが自分の意思だというようにぐっと力を込めると、彼もまた強く握り返してくれた。同じ意見を持つ人物と出会うことで自分の芸術論も変わるだろう。マルクはその考えに喜びをかみしめる。この世が光に満ちたような気がした。幸せが一気に訪れたような気さえしていた。これから自分はさらに成長するだろう。そんな確信を抱く。  カンディンスキーとの感動の対面、それは赤い夕焼けが二人を照らすカフェでのことだった。この時マルク三十歳、カンディンスキー四十四歳。芸術を語ることに年齢の差など、彼らには存在しなかった。  それからは互いの作品を見せ合い、批評し合った。更なる境地へと目指し、二人は互いを高め合った。それは知り合うまでの年月を埋めるようにも見え、やはりそこに歳の差などありはしなかった。二人はまるで知己であり、唯一無二の友人を得たように日々を暮していた。     
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