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『ヒロ君へ
福岡での生活は慣れた頃かな? 私は元気にやっています。会社では滝沢さんや美紀さんに相変わらずお世話になっています。食事に出掛けたり、カラオケに行ったり楽しんでいますよ。安心してね。みんなヒロ君に会いたがっています。東京が恋しいだろうね、と心配してくれていますよ。
私は空いた時間に結婚後の物件も探しているんですがヒロ君は吉祥寺はどう思う? 私はあの街がいいかなって思うんだけどどうですか? 子供と過ごすことを前提での広さがいいのか、二人分の広さが___』
ここまで読んで広志はその手紙を便箋に仕舞った。すると引き出しを開けて一通だけある別の便箋を取り出した。一般の茶封筒だ。中から手紙を取り出して読み始める。
『瀬川広志様
こんにちは。色々とお世話になりありがとうございました。綾の病状ですが、あまりよくないようです。彼女は再びトラウマと闘い続けている。当時は遅れた学習期間を取り戻すため、そして大学入学という目標を持って学習に励むことでその苦しみから脱することができた。今は瀬川さんとの結婚という希望を持って病魔と闘っている。あなたが今の綾を支えている。そのことを念頭に置いて綾を温かく見守って頂きたいと思います。
会社は先月に正式に退社したようです。入院生活が長引くと思い、ご両親から申し出をしたそうです。彼女はまだ勤めている気でいるようですが、そこは黙っている方がいいと思い、そっとしてやっています。
それでもあなたが側にいないことは彼女にとって大きな痛手となっています。しかし見方によっては丁度いいタイミングで転勤となり、その間に療養ができると思えば良かったのかも知れません。どうか綾を見捨てず、彼女の気持ちを受け止めてやって下さい。またお便りします。どうかお元気で。
レイコ』
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