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「まぁ完全な妄想だとは分かるんですけどね。気の毒と言えば気の毒な女です。その後に佐伯浩介と知り合ったようなのですが、これも日記に事細かく記されていました。妄想なのか本当なのか今では確認もしてみようがありませんがね」
と言うと和久井警部補はポケットから煙草を取り出して火を付けた。
「あ、煙草いいですか?」
慌てて広志に聞く。
「構いませんよ」
広志は滝沢を思い出した。心配しているだろうと思った。会社にはこの事件の話は伝わってしまっている。滝沢が珠樹の侵入経路を暴いた。自分がもっと早くにこのことに気が付いていたらと後悔しても遅かった。
(これが終わったら直ぐに連絡してやろう)
「佐伯とはどこで知り合ったのでしょう?」
「ああ、珠樹は一時期チェーンの喫茶店でアルバイトを始めたようなのですが、佐伯はそこの店長だったようですね」
「なるほど」
「何でも、親切に接してやったようですよ。佐伯を悪く言う人間もいなかったので、それは本当のようですね」
広志は何となく話が見えてきた。
「それでストーカーになってしまったのですかね?」
「のようです。間違っていたら瀬川さんも同じ目に・・・」
フーと横を向いて煙をふかす和久井警部補。そして話し始めた。
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