エピローグ

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 レイコとしても手紙を送って来る綾。今はレイコの方が冷静に見えて来る。綾として送って来る手紙の内容はほとんどが同じような文面だったからだ。やるせない気持ちになる広志。  自分に出会わなければ綾は真っ当な人生を歩んでいたのではないか。病気を克服し、社会復帰も果たして、優秀な社員として人生の再スタートを切った矢先に、自分が再び闇の中へ叩き落としてしまった。悔やんでも悔やみきれない想いに駆られる毎日だった。  自分にできること。それは綾を待ち続けることだと強く思う。綾は広志を待っているつもりだが、それは全く逆だった。あの頃の本当の綾。あの時感じた幸せ。きっと綾は帰って来る。そう信じるしかない。一度ならず二度までも精神が崩壊するほど恐怖の目に遭った綾。その責任を自分が負ってでも今度こそは綾を必ず幸せにしてみせる。そのためには今目の前にある問題のひとつひとつを直視し立ち向かうしかない。  それは広志の人生を懸けた闘いであり、希望でもあった。  了    
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