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彼女のことでかつての後輩を責めるなど、みっともない真似をしていることは分かっている。 それでも自分ではどうしようも止められない言葉が口をついて出てくる。 「いつからオレの知らないところでアレは、アイツは……。和歌っちは正規の教諭として勤めてんだよな? 先生と生徒があんなふうになるってまずいって分かってるなら、止めるべき立場だろう? 止められないと思うなら放置しておかないで、せめて知らない仲じゃないんだから一言くらい相談してくれてもよかった。そうすれば、非常勤講師を辞めさせるっていうことだってできたんだ。正規雇用じゃないんだから。そうすれば、未然に防げた。物事にはそうなる順序があるんだ。それを先に予想してオレでも和歌っちでも先手を打つことで、浅葱が選択していく道だって変わった」 口からは淀みない言葉がとめどなく流れた。 低く、なじる口調に、近くにいる旧友たちがちらりと視線を大樹に移して、口を閉ざした。     
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