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泥のように粘りつく眠りを妨げる声がした。 その声は何度も沈む大樹の意識を、泥の中から引きずりあげるように涼やかだ。 しかも気遣う気配に満ちていて、大樹はふと親しみを覚えた。 親しみというよりは、戻らない懐かしさに近い。 「あさぎ」 口にしたら、少し意識が明白になる。 相手が少し息を飲む気配がした。 帰ってきたのか。 そう思うと、指先にまで血液が巡るように力が少し出てきた。 軽く揺すられ、大樹は軽く呻いた。 肩あたりに誰かが触れているのがわかる。 そのぬくもりとともに聞こえる優しい声に、大樹は、ハッと眠りの底へ引きずられかけた意識をつかんだ。 「浅葱!?」 声を上げるのと、誰かの小さな悲鳴と、そして激しい頭痛が大樹を一挙に襲った。 その瞬間、すぐそばで鐘をつかれているような痛みに反射的に身が縮んだ。 薄暗い視界を地面に立つくたびれたスニーカーが掠めた。 やけにそのスニーカーと自分の距離が、いや自分が地面に近い。 ようやく地面に座り込んでいると自覚する。 少し動かすだけで、ひどく頭が重く痛い。 なんとか痛みを抑え込んで、スニーカーの持ち主に焦点を合わせた。     
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