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ただそれが合コンばかりというのが、大樹には少し苦痛になり始めていた。 自暴自棄だったはじめの頃に比べてそう感じるのは、少しずつでも立ち直ってきているせいだろうか。 大樹はスーツの上着とビジネスバッグを手にすると、立ち上がって大股で暗い店内を横切った。 甘いコーヒーの女性の隣をすり抜けかけた時、タイミング悪く彼女が立ち上がって通路に踏み出した。 思わずぶつかりそうになって、大樹はバスケでならした持ち前の運動神経の良さで体を回転させた。 ぶつからなかったものの、空気の動きで女性がハッとしたようにたたらを踏んだ。 「ご、ごめんなさい。見えてなくて」 メガネをかけた、20歳かどうかの若い女性が頭を下げた。 学生だろうか、テーブルには難しそうな理系の本とノートが広がっていた。 「いや、大丈夫。驚かせて悪かった」 「いえ、こちらこそ……。どうぞ」 女性がすっと自然に一歩身を引いた。 その姿に既視感を覚えかけて、大樹はうずいた傷を抑えるように視線をそらして「いや、先にどうぞ」と身をテーブル席の方に寄せて通路を開けた。 「ありがとうございます」 女性はメガネの奥の瞳を穏やかに細めると頭をさげて、大樹の脇をすり抜けるようにして歩いていった。 彼女なら、それでも意固地に大樹を先にいかせただろう。     
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