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そう思った自分に、乾いた笑いがついこぼれた。 彼女なら、とは誰のことだ。 思い出したくもない。 ああ、苦いコーヒーが飲みたい。苦いタバコを吸いたい。 苦くて、舌がしびれそうなほどに、不味くていい。 いらぬ記憶、いらぬ匂い、いらぬ体温、いらぬ感覚。 いらぬ、感情。 どれもを打ち消してしまえるほどの。 眼裏によぎりそうになった笑顔を無理に追い払い、大樹はレジの方へ足を向けた。
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