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懐かしく愛しい声が揺り起こすように名前を呼んでいる。
つい手で探る。
探れば、そこに柔らかくあたたかいものがあって、触れると泣きたくなるほど愛しくなって。
聞こえた声に誘われたように手を動かし、それが冷えた空気とシーツしか掴まないことに少しずつ違和感を覚える。
そして、重たい頭に現実が戻る。
大樹は寝返りを打って、その瞬間、こめかみに走った頭痛に顔をしかめた。
昨晩は、散々飲んで、散々な合コンだった。
ブラインドの隙間から射し込む光はすでに明るく、サイドテーブルの目覚まし時計はすでに昼過ぎの数字を指している。
起き上がろうとしてやめ、代わりに腕で光を遮るように顔の上に置いた。
酒を浴びるほどに飲んだ翌日、幻のように見てしまう影は、今でも大樹の胸を締め上げてくる。
憎んでやりたいと何度も、何度も、思った。
胸の奥を引きちぎる痛みを二日酔いの頭痛のせいにして、大樹はうめき声をあげた。
「くそ……っ」
合コンの場での筒井の言葉が蘇る。
「こいつ、最近ふられちゃってさー、もーう暗いのなんの。誰か慰めてやってよー」
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