二章 気づいたら

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二章 気づいたら

 祖母から有難い予言をもらってから、もう十年がたつ。  十六夜(いざよい)は今日で二十歳を迎える。  そう、祖母が予言した歳。  とはいえ、とくに予兆があるわけでもないので、いつも通り仕事へ行く。  学校は近くの短期大学を卒業した。  祖母が言ったことを真に受けたからじゃない。  ただ、本命の受験に高熱を出して落ちただけ。  卒業してから父の事務所で働かせてもらっている。  身内の職場というのは、父が私のことで他人に迷惑をかけないようにと、余計な気を回してくれたおかげだった。  家訓だった己のなんたらかんたらは、十六夜に限って適用されることはない。ただ、ぬくぬくと家の仕事を手伝っているだけの毎日。  十六夜にも夢はあったし、恋に落ちることもあった。  それは誰のせいでもなく、十六夜自身が受験に失敗しただけで崩れただけ。  父がどう考えて、十六夜をこの事務所で使うかはともかく……十六夜自身にとっては、感謝していることだった。だからこそ、真面目に日々の仕事をこなしていく。  父に呼ばれ応接室に行くと、祖母と父が十六夜を待っていた。  母は十六夜の代わりに電話番を事務所でしている。
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