123人が本棚に入れています
本棚に追加
「会社の飲み会で上司と一緒の3次会はないよねー
数ある危機をかいくぐって、抜けられてよかったわあ」
行きつけの小ぢんまりしたショットバーで
カウンターでマスターに『酸っぱいの作って下さい』と頼んだ同期の酒豪、長野萌(ナガノモエ)を横目に見ながら
月島冴子(ツキシマサエコ)は目をトロンとさせ、甘めのカクテルに酔っぱらっていた。
「そー・・・だね・・・」
22歳の新卒で入社して、今年で5年。
2人は同じ営業課所属の、営業事務。
仕事は毎日慌ただしいが、営業マンの補佐、発注や発送の手配、クレームや問い合わせ対応、見積もり依頼などなど遣り甲斐もあった。
上場企業でもあるMMコーポレーションは、入れただけでもありがたい会社だった。
同期のモエはサバサバしていて、『見た目はすごく女っぽいのに性格は男っぽい』とよく言われるサエコには付き合いやすかった。
ふと、サエコはカウンターの反対の端を見た。
ホントに、何の気なしに、ふと見たそこにはーー
ーーあーー白い・・・
全身白い服を着て、髪もシルバーグレー・・・
少年のような、きれいな男の人が座っていた。
ふと、少年がサエコを見た。目が合う。
ーーあ、笑った・・・?
少年は、サエコを見ながら微笑み、近づいてくる。
肌が瑞々しくて、中性的で、滅茶苦茶色っぽくて、美しい人だった。
ーーハーフ、かな?違う、かな?微妙にわからない・・・あ。こっち来る・・
サエコはゆっくりモエを向くが、モエはマスターと大笑いして盛り上がっていた。
「・・サエコ・・」
ーーえ・・・私の名前・・・?
聞き違いかと少しびっくりして左側に向き直ると、あの少年が隣席に座っていた。
ーーきれいな、子・・・誰だろ・・年齢不詳だ・・・20歳ぐらい、かな?
どこかで会ったら、確実に覚えてるような、きれいな・・・男の子
最初のコメントを投稿しよう!