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サエコはトモキと一緒に電車に乗る。
駅までの慣れた道。
陽が長くなって、街路樹の影が長く伸びる。
歩道を歩く時、トモキはさりげなくサエコを人波から守る
歩くスピードも、サエコに合わせる。
低角に差し込む日が、トモキの笑顔を浮かび上がらせた。
サエコの異動した総務課はあまり残業のない部署だった。
社内の機密事項も扱う部署なので
いつも活気に満ちて慌ただしい営業課とは違って
静かなゆとりがあった。
上の、方針だ。
「・・トモキ」
「ん?」
「トモキと私がこの間から付き合ってるのって・・・会社のみんなは知ってると思う?」
トモキはニコッと嬉しそうに笑った。
「ああ、もちろん。」
「・・・なんでわかるの?」
サエコは真顔でトモキを見る。
「俺が言って回った・・・
んなもん、当たり前だろ?
サエコに横恋慕されないためだよ」
「だ・・・誰に言ったの」
「当然、全社員に広まるように、おしゃべり好きの各部署の奴らは押さえたよ」
「そっか、・・・それでね。納得」
満足そうにニヤーッと微笑むトモキ。
電車の中で
耳元に唇が近づく
「サエコ、俺は今度こそ、お前をもう、
離すつもりはないから・・
覚悟して・・
もう、二度と・・手離すつもりはないんだ・・」
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