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「サエコは、本当に、人を好きになったこと、ある?」
その男の子はサエコを優しい目で見て、言った
吸い込まれそうな、きれいな瞳
「んーん。ないよー・・ね、どっかで会ったっけ?」
酔っぱらっていたサエコは自然に返事をしていた。
ーー正直、ない。どうしようもなく、ない。本気で人を好きになったことなんてーー
「・・運命の人に、会いたい?」
「・・・うーん?
どーかなー?」
サエコは両肘をカウンターにつき、指を組んで唇に当てた
ーー『運命の人』か。現実味はないけど、響きは素敵だね・・
そんな人、まずいないけど
少年は自然な仕草でサエコの組んだ手を優しく解くと、左手を取った。
あーーこの・・手・・・
なんだろう・・懐かしいような・・・
キレイだけど、全く・・トキメカナイ・・・
それでもサエコが少年の美貌をぼんやり見つめていると、突然モエがサエコの肩をバン!と叩いた
「サエコお!」
「・・いったあ!なにすんの」
思わずモエを睨む。
「ほらほら、グラスがカラじゃん!飲みな飲みな~!」
「ああー、うんー、飲む飲む!」
サエコの前にお気に入りの甘いカクテルが置かれた。
ふと隣の気配がなくて、あの白い少年は消えていた。
「・・あれぇえ・・
ねーえ、マスター・・モエー・・ここに、すごーくきれーな男の子が、いたでしょー?」
「えーなになに?知らないよ~」
「男の子、ですか?」
2人ともキョトンとしている。
「あれー・・・」
「幽霊でも見た?それとも酔っぱらいの幻視?アンタ焦点あってないしww」
モエがケラケラ笑う
サエコは両頬を自分で挟んで
火照った顔を冷たい手で冷やした。
少年が触ったサエコの左手
小指には、細い、とても細い、金色のリングがはめられていたーー
「んー・・・?」
サエコは取ろうとするが、指輪はボンドででもくっつけたように取れない
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