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ーーま、いっか
サエコは酔っぱらっていて頭がまわらない
しばらく楽しそうなマスターとモエの話を遠くに
聞くでもなく聞きながら
サエコはくいっとカクテルを飲んだ。
カラン・・ドアが開いて、外の匂いをまとって
スーツ姿の男が1人入ってくる。
「・・ああ、やっぱりここにいた」
男はマスターに会釈するとモエをニコッと見た。
「長野さん、お疲れ様」
男は難波知樹(ナンバトモキ)、営業課の営業マンだ。
「難波係長、お疲れ様でーす」
モエがグラスをかかげる。
「酔っぱらいのサエコを探してた・・・
心配だから、連れて帰っても、いいかな?」
「難波係長も、ホーント、サエコが好きですねえ・・
私はまだまだ飲むから、お願いします。
あ、係長、いくらサエコがフリーだからって、送り狼にはならないよーに!ね」
モエがウインクした。
「トモ・・キ?」
サエコはトロンとした目でトモキを見た。
サエコは今にも寝てしまいそうだった。
「酔っぱらい・・・帰るぞ」
「トモキ、あらし、酔ってらい・・」
ーー酔っぱらって、ないよ。
・・けど・・・口も、まぶたも、重い・・ふわふわ気持ちいい・・・
「なにそのカワイイ顔・・・
サエコはお酒に弱いくせに、すげー飲むよね・・
ほんと危なっかしい・・・女が記憶なくなるまで、飲んでんなよ」
サエコの頬に手を当て、フッとため息をつくようにサエコにだけ聞こえる小さい声で言い、笑った、トモキ。
「じゃ!この酔っぱらいは俺が送るね、長野さんは、ごゆっくり」
「ありがとございまーす、係長、また月曜日ー!」
トモキはスマートにマスターにお札を出すと、
半分意識のなくなりかけたサエコの腰を抱えるようにして、店を出て行った。
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