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トモキは追いかけて
人気のない廊下で、サエコを捕まえた。
腕の中にふわりと抱きとめる。
「サエコ・・お前・・・痩せたな・・・ずっと連絡取れないし心配してた・・・
大丈夫なのか・・」
トモキの目は純粋にサエコを心配していてーー
サエコの目は思わず潤んでしまった。
ーートモキ・・こんなとこ、見られたらーー・・・
「ダメ、トモキ・・離して・・・
難波係長・・私から離れてください・・・」
サエコは顔を伏せてトモキを振り払う。
常務に睨まれていることを知らないトモキは親身になってサエコを見つめた。
「お前・・・突然秘書になって・・仕事・・きついのか?・・こき使われて、ひどい目にあってるんじゃ・・・」
ふと、トモキの視線がサエコの手首に落ちる。
ほんの1ミリ、隙間から覗くアザーー縛られた、跡
「っ・・・これ、まさか・・・常務に・・・?
えっ・・・おま・・・そんな・・・まさか・・・」
トモキの心配顔がサエコに近づくーー
サエコは自分の両手でトモキの胸を必死に押した。
「・・・難波係長・・!
迷惑なので、もう私には関わらないでください・・・」
サエコが走り去る。
トモキは目を見開いてーーすぐ、伏せた。
拳を握って・・
小走りに戻るとき、常務は部屋から出ていて・・その姿を見たサエコは震えた。
常務は樹部長と話していた。
どちらかというと樹部長が常務をさえぎる形で通路に立っていた。
サエコは会釈してさっとそばを通り過ぎる。
隣を通るとき、常務の腕がサエコをガツッと掴んだ。
ビクッとカラダをこわばらせる、サエコ。
「ーー遅かったね?月島さん・・帰ってこないから、心配で、探しに行くところだったんだよ・・」
「・・すみません・・」
常務は手を離しサエコをじっと見つめると、
「先に戻ってなさい」
と言った。
「はい・・」
樹部長が痛々しい目で見つめていることに
サエコは気づかなかったーー
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