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その時ーー
カランとドアベルが鳴って、わらわらと数人の客が入って来た。
「こんばんはー!マスター、4人座れるー?」
「どうぞ」
カウンターに座ってくるのはスーツ姿の男性4人。
また、気づけばいつの間にかレイの姿はない。
ーー幽霊とか、妖精なのか?・・・あいつは。
あー!そういえばレイに、どうせなら3次会より前に戻してって言うの、忘れてたな・・・
「あれー?君たち」
カウンターに座った男性陣の1人が、モエとサエコに声を掛ける。
「もしかしてさ、営業1課の・・・」
「あ、こんばんは!情報システム部の結城課長ですよね?」
モエがニコッと笑う。
ーーああ、総務の結城先輩のご主人・・・この人が。・・・渋いなあ・・・
気持ちはハッキリしているが、カラダはアルコールがまわってままならないサエコは、ポーっとしてそのやり取りを見ていた。
「ほーい
結城課長と、情シスの精鋭、若手3名でーす!
僕、真鍋武尊(マナベタケル)!
こんなキレイなオネエサンたち、うちの会社にいたんだねー」
「うまいわねー」
モエが笑う。
「実は後つけてたんだよね」
「えー(笑)」
「タケル、いくらうちの部が男ばかりで女性社員がいないからってガッツくなよ
ほんと、お前は優秀なのに・・軽いったらないな」
いつの間にかサエコの左隣に座った結城課長が笑った。
情報システム部は、少人数で運営している。
「課長は新婚なんだから、もう色目使っちゃだめですよ」
「新婚って言っても、もうすぐ1年だからな
嫁以外のキレイな女性に目移りしても、たまにはいいだろ?」
結城課長が意味ありげにサエコの太腿に手を置く。
「またまたー!あんな美人な嫁さん貰っといて」
その後、他の2人も自己紹介をして、モエとサエコも自己紹介をした。
お酒を注文したタケルは、明るめで髪質の硬そうなツンツンヘアで、若くてJ系の端正な顔立ち。モエとサエコの間に座りたがって、モエが1つ右にずれた。
モエはマスターとずーっと楽しそうに話している。
「こんばんは!飲んでるー?」
右隣に座ったタケルに顔を覗き込まれて、サエコは頷いた。
「うん、飲んでる」
「ねーねー、サエコさんって、何歳ぐらい?」
「27」
「・・・わ、『何歳に見える?』とか聞かずに、答えてくれるんだ!
いや、サエコさん、なんかエロイなあ・・・醸し出すフェロモン・・・ていうか雰囲気が極上にセクシーだよね!」
「そうかな・・・」
「確かにな。興味ある・・・」
左隣の結城課長がサエコの耳元に口を寄せた。
「あー課長!既婚者が人の恋路を邪魔しないで
サエコさん、こっち向いて・・・ねえ、
年下の男ってどう思う?」
「ん・・・?
別に・・・」
「そっか!
俺、23だけど、どう?恋愛対象になる?」
「・・・」
ーー23歳か・・・若いなあ・・・
サエコがまたポーっとしている間に、新しいグラスが目の前に置かれた。
こくんと飲むと、甘く、飲みやすかった。
「サエコさん、これも飲んでみてよ」
タケルが自分の飲みかけのグラスをサエコに差し出した。
「うん」
口元に持っていかれ、サエコはそのままゴクンと飲んだ。
「ん!・・・ごほっ・・・」
ーー熱い・・・
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