123人が本棚に入れています
本棚に追加
「オッハヨー!
なになに・・?難波係長とサエコ・・朝から痴話げんか?」
素っ頓狂な声。後ろからモエが来た。
「長野さん!あんたもなあ
サエコが酒弱いの知ってんなら、最後まで面倒見てやれよ!
あぶねえから2次会までは気ぃつけてたのに2人して俺を撒きやがって
探しに行ってもサエコは焼き鳥屋行ったって・・・場所は知らねえって言うし
携帯は繋がらねーし
夜中まで焼き鳥屋っていう焼き鳥屋を探しまくったんだぞ!」
「あーね。・・・サエコまたやっちゃったのか」
モエが苦笑いする。
「まあまあ難波係長、私は保護者じゃないし当たらないで!
サエコも立派に大人の女なんだからね!」
「絶対、別れさせるから」
トモキはサエコを睨んだ。
トモキには、ほどなくサエコの相手が情報システム部の入社2年目の『真鍋武尊(マナベタケル)』と知られてーー
ある日の午後、給湯室で皆のお茶の用意をするサエコの背後に立つ、影。
「・・・サエコ」
チラっと見ると、それはトモキだった。
「・・・どうかされましたか?難波係長」
「今度の奴は随分若いな
・・・あいつは遊びだぞ」
「そうでしょうね、別にいいんです」
淡々とお茶の用意をしていく。
ーーそもそも『結婚』なんて考えていないサエコには、『遊び』でも、ちょうどいいぐらいだ。
考えたくはないけれど、自分の身の奥にも確実にある、性欲。
時々それが満たされれば、今は、それでいい。
カラダへの愛、しかいらない
「・・・俺にはわからん」
トモキはため息をついた。
「お前を愛してるって何度も言ってるのに・・・
なんであんなちゃらい奴なんかに・・・」
ーーそれは。
トモキも私にいずれ『結婚』を求めるから・・・『愛』を求めるから・・・『心』を求めるから
「サエコは、あいつが『好き』なわけじゃない。
そんなことはわかってる。
・・・遊びならよくて、本気がダメとか・・・
女のお前が考えることが、俺にはわからないよ」
ーーー・・・
サエコは手を止めた。
私は、カラダはよくても、『心』は愛されたくないーー?
そうなんだろうか・・・
最初のコメントを投稿しよう!