情報システム部・真鍋武尊(マナベタケル)

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「・・軽蔑、しないの?」 タケルが、夕日の方を向いたまま、瞬きをした。 「・・うん」 「はっ?・・・」 タケルと目が合う。 ひどくおびえたような、その瞳 「・・・タケル君は若い男の子だから、そういうことも、仕方ないんじゃない? 私は全然、何ともないよ」 タケルの目が、スッと真剣になった。 「・・・さっちゃん・・・」 眉を寄せたタケルの手が、サエコを抱き寄せ、ギュッと胸の中に抱きしめた。 2人はしばらく、そうしていた。 「・・・昨日さ」 耳元で囁くタケルの声。少しくすぐったい。 「ん」 「会社の奴が『あの女、そろそろ飽きたんじゃねー?こっちにまわせよ』とか言ってきて」 「うん」 「俺・・・すっげー腹が立って」 「・・・うん」 「『ふざけんな!さっちゃんは俺の女だ!手え出してみろ、一生後悔させてやる』って・・・」 「・・・」 「相手、引いてて」 「うん」 「『タケル、熱でもあんのか?お前あんな鬼畜男だったのにどーした』って。 課長も笑って『タケル、変わったなあ』って『本気、なんだな』って言って」 「・・・」 「俺自身が、そんな自分に一番びっくりしたんだけど」 「うん」 タケルは腕の力を緩めると、サエコの肩を両方持って、その目を覗き込んだ。 「さっちゃん・・・これは、嘘じゃない。 好きなんだ」 そっと優しく唇が重なる。 「・・・ひどい男で、ごめん。 傷つけて、ごめん 『何ともない』なんて。さっちゃんは女の子なんだ、そんな強がらないでいい・・・ 始まりはあんなだったけど、今は違う。 心から、好きだ・・・さっちゃん・・・ ホントに好きになったら・・・逆に・・・ さっちゃんの気持ちとか、考えて・・・ こんな俺でも、色々考えて・・・ 簡単に抱けないって思った・・・ 今は、キスだけで、破裂しそうに、嬉しい・・・ 俺、中坊みたいだよね・・・」 始めの1週間、タケルは喜んで何度も何度もサエコを抱いた。 それは、ヤリタイことをサエコで全部やったみたいな抱き方だった。 タケルの言う通り、それは今はない。 2人は今は、キスだけーー。 ゆっくり落ちて行く夕日の中 サエコは何度も角度の変わる優しい口づけを受け入れた。 ーータケル君。遊びで、いいんだよ。 心の結びつきは、いらないの。 ホントに、何ともないの。 私は・・・カラダだけの方が気が楽なんだけど・・・ こんなに・・・私・・・いびつ、なんだ・・・ 心の中で、サエコは呟いた。
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