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このルートでも、10月からサエコは総務課へ異動になった。
ーーたぶん、ループを抜けても、異動にはなるんだろうな・・・
と、サエコは思った。
相変わらず、トモキからは何度も別れるよう説得される。
タケルも、トモキから待ち伏せされる、と笑っていた。
タケルの所属する情報システム部は総務課の一つ下の、14階にある。
「はい、総務課、月島です」
内線に出ると、受話器の向こうから聞こえる、笑い声。
「はいっ、情報システム部、真鍋でっす!・・・あははっ」
「ぷ・・・お疲れ様です」
サエコの声音を真似して、裏声を出すうちに、自分で面白くなったらしく笑いながら言うタケルに、サエコも思わず笑った。
「・・・総務課の月島さん」
「はい」
「今から5分、時間が取れませんか」
「今なら大丈夫ですよ」
「じゃ、非常階段の踊り場で」
「はい」
「よっしゃ!」
受話器の向こうから、ヒューヒューと口笛や囃す声が聞こえる。
サエコは微笑みながら、受話器をそっと置く。
ーータケル君は、明るい子だな。
年下なんだけど、なんか頼れる感じで・・・
こういう男子と付き合う女の子は、きっと、幸せなんだろうな。
サエコは『ちょっと席を外します』と告げて、非常階段、15階と14階の踊り場に向かった。
既に、タケルは来ていてーー
サエコにニコッと微笑む。
「さっちゃん!」
「タケル君」
タケルは、スッと背中から小さなブーケに設えた花束を出す。
「わあ、お花・・・?」
ビックリするサエコに、タケルは言った。
「さっちゃん・・・お願いがあります!
俺と付き合ってください」
「え・・・」
頬を染め、ガバッと頭を下げる、タケル。
「え・・・と
タケル君、私達もう、一応付き合ってるんじゃ・・?」
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