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ーー人事部長ともあろう人から、プライベートに口を挟まれた・・・
・・・ルートが違っても・・・常務の気持ちは同じ・・・ってこと?
常務が求めていることが推測出来て、サエコはこくんと息を飲んだ。
「・・・常務の、私の命令だ。
情報システム部の真鍋とは別れるように」
「・・・」
サエコは『調べはついてる』と言わんばかりに高圧的に言い放った常務を、じっと見つめた。
ーーやっぱり・・・同じなんだ
「月島さん、仕事のためです・・・考えてみてくれませんか」
樹部長が取り繕うみたいに、言う。
「・・・少し、考える時間をください」
ーータケルくんとはもうない・・・
だって、また、リープするんだし、もともと面識はない・・・
でも、『常務秘書』はきっと、変わらない未来・・?
サエコは小さく会釈すると、ソファから立ち上がった。
ドアの前ーー。一礼するサエコに常務がつぶやく。
「人事異動は、状況によっては情報システム部も、と思っている」
サエコはスッと顔を上げて常務をまっすぐ見つめたーー
ーー暗に、別れなければタケルをーー真鍋武尊を異動させるって言ってるんだ・・・
常務は、面白そうに、笑っている。
ーーこの人の、闇。
愛を知らないのは私もだけど
この人、常務もーー
立派なスーツに身を包み、逞しい大人のカラダをしていても・・・
サエコには、まるで欲しいおもちゃを買ってもらえるまで地団太を踏んで泣く子どものように思えたのだった。
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