情報システム部・真鍋武尊(マナベタケル)

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「さっちゃんを好きになってからね」 「・・・」 「好きな人がいる人の気持ちが・・・これでも、ほんの少しわかって」 「・・・」 「怖かった。自分のしてきたことが。」 タケルの額が、サエコの額に優しくぶつかる。 「それでもさっちゃんが振り向いてくれて 天にも昇る気持ちになったけど 好きな人がーーさっちゃんが俺の前から去ったら、この先俺を嫌いになったら? 突然誰かに奪われたら? ーー好きになればなるほど、今度はそんなことが怖くて」 「・・・」 タケルがサエコの瞳を覗き込む。 「ははっ・・・笑っていいよ、さっちゃん 見て。俺、震えてる」 タケルの指は小刻みに震えて、サエコの頬を包む。 「好きな人に触れるって、こんな感じだったんだ」 「・・・」 「さっちゃん、俺は今夜、初めてさっちゃんに触れるーー 心ごと、好きだ・・・」 タケルの震える唇が、サエコの唇を塞いだ。 「・・・ん・・・」 震えてくっつけるだけだったそれが、徐々に深まる。 「好きだよ・・・さっちゃん・・・ どうしてかな・・・いつの間にか、こんなに好きになってた・・・」 タケルは、繊細なガラス細工に触れるように、優しく優しくサエコに触れた。 愛おしいもの、大事なもの。かけがえのないもの。 そんな風に扱ってくれる気がして・・・ 「愛してる・・・」 何度も目を合わせ、愛を囁き、大切に触れていった。 サエコのカラダも導かれるまま熱を持ち、タケルに溶けていく。 「ん・・・!」 「・・・さっちゃん・・痛くない・・・?大丈夫?」 「・・・うん・・・だいじょぶ・・」 狂おしいほどゆっくりで、優しい、カラダの繋がり。 ゆっくり深く、繋がっていく、カラダ。 ゆっくり過ぎて、逆にたまらない感覚に支配される。 優しく芯まで深く繋がって、タケルの目は潤み、まるで震えて泣いているみたいで。 サエコの胸はなぜか痛かった。 ーー私を愛さないで、いい・・・ 愛なんて・・・ 私にはーー 10月15日の夜が更けていく。 「さっちゃん、・・・ものすごく、愛してる いつか・・・さっちゃんも・・・俺のこと 愛してほしいな・・・」 「・・・」 カラダに残る、疼き。 小刻みに続く、余韻。 切なげに、わずかに目を潤ませたタケルは、サエコを大事に大事にくるむように抱きしめる。 時折強く、腕に力が入ってーー ーー眠ったら、またーー きっと1か月前だ・・・ タケル君・・・なんとなく、だけど・・・切ない気持ち、ちょっと伝わってきたよ、私にも。 タケル君、本気で好きになれる人、可愛い彼女、見つけてね・・・ あなたは、幸せに、なってね。 絶対、幸せになってね・・・ ありがとう・・・これで、さよならだ・・・ ほどなくサエコもーーぬくもりに包まれて、眠りについた。
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