初めてのひと・巽涼(タツミリョウ)

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「会社の飲み会で上司と一緒の3次会はないよねー 数ある危機をくぐりぬけ、抜けられてよかったわあ」 行きつけの小ぢんまりしたショットバーで カウンターでマスターに『酸っぱいの下さい』と頼んだ同期の酒豪、モエ。 ーー3回目のリープか・・ サエコは目をトロンとさせ、甘めのカクテルに酔っぱらっていた。 「そ・・だね・・・」 サエコはカウンターの反対の端を見た。 ーーいた。『レイ』だ・・ 目が合うと、レイは、サエコを見ながら微笑み、近づいてきて、隣に座った。 「サエコ、どう?心は動いてる?」 「そうだね。ちょっと痛いよ。 好きになってくれた人を、好きになれたらいいのにって、たくさん思うよ。 同じくらい、そんなのやっぱりいらないとも。 ねえ、レイ・・・一つ、お願いがあるの。 このままループし続けるなら、どこかで、1次会ぐらい前に戻してくれないかな?」 レイは面白そうに微笑んだ。 「1次会?」 「お酒よ。 お酒のせいで、なんか・・・記憶がないのに抱かれるのがホント我ながらイヤになったから・・・」 「そう。・・・考えておこう まだ見つからない、サエコの『運命の人』って、誰なんだろうね?」 「そんな人がいるなんて思えない・・・レイは、知ってるの?」 「さあね」 その時ーー カランカラン・・・とドアが開いて 1人の男が入ってくる。 「マスター、席、空いてる?」 ーーあれ・・・この声・・・ サエコが振り返ると、 ーーやっぱり、巽さんだ・・ それが、巽だった。
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