熱帯夜。

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「翼、どうした?」 「セイジ、あっち行こう」 「なんだよ、急に……」  翼に腕を捕まれ強引に誘導されるが、その肩越しに、誠司は見慣れた人物を見つけてしまった。 「清香……?」  その名前を呟いたのが聞こえたのか、翼は足を止めた。目の前で、浴衣姿の清香がカジュアルなジャケットを着た男と楽しそうに歩いていた。手には綿あめを持ち、男は清香の肩を抱き、仲睦まじく並んで歩く姿は、どこからどうみても恋人同士だった。 「なん、で」 「セイジ、行こう」 「体調悪いって言ってた」 「いいから」  翼が強く腕を引いた衝撃で、誠司は持っていた食べかけのじゃがバターを落としてしまった。それを拾うよりも、視線は歩いていく清香を後ろ姿を追っていた。    翼は誠司を引きずるようにして、二人はその雑踏から離れていった。
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