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翌日、誠司は清香に連絡をした。
「誠司くん? あ、昨日はごめんね」
「大丈夫だよ。ねぇ清香さえよかったら、ダブルデート仕切り直し、しない?」
「え?」
「せっかくだしさ。僕も清香の友達と、その彼氏とも会ってみたいんだ」
「う、うん。それはいいけど……」
驚くほど平然と嘘をついた。昨日までの自分なら考えられなかっただろう。
やはり、あの男を忘れることなんてできそうになかった。そのために嘘をつくくらいなら、なんてことはない。
スリル満点の甘い夜を一緒に過ごしたあいつは、自分に新しい世界を見せてくれた。
あの暑い夏の夜、熱帯夜が見せた幻は、誠司の心に新たな火をつけた。
自分では消せそうにない。
夏はまだ終わってない。暑い夜は、まだ続く。
これは夏の暑さじゃなく、あいつのせい。ぜんぶ、あいつのせいだから。
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