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「最悪だ」
オレンジ色に艶めくバターをたっぷり絡ませたじゃがいもの欠片を口に含み、第一声をあげた誠司に翼は吹き出した。
「うっそ、これで三軒目なのに?」
「僕のじゃがバターセンサーが使い物にならないなんて」
「じゃがバターセンサーってなに! ウケる! セイジ、やべえやつ、持ってるな!」
翼が背中を丸めて笑っている。何がどう面白かったのか、わからないが、さきほどから自分の言動が翼の琴線に触れているらしく、笑われてばかりいる。
あれから、誠司は厳選に厳選を重ねた屋台でじゃがバターを購入した。しかし、じゃがいもの蒸らし具合も中途半端で硬さが残り、誠司にとっては思っていたクオリティに達していない店だった。あまりに落ち込む誠司を見かねたのか、翼はその後も一緒にじゃがバターの屋台を探してくれたのだが、次の店も期待はずれに終わり、そしてこの三軒目も味は平凡か、それ以下で、誠司はがっくりと肩を落としたのだ。
「誠司、ホントおもしれーな!」
「面白い? 僕は普通だと思ってるんだけど」
「狙ってないからすげーわ。マジでウケるんだけど」
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