箱の中のＡＩロボット

「アオイ様に合う四字熟語は、海市蜃楼(かいしかいろう)です」
「どういう意味？」
「一言で申しますと、蜃気楼です」
「蜃気楼なの？」
「はい。実体のないうつろなものや、非現実的な思考のたとえを四字熟語にしたものが、海市蜃楼。いつも、好きな人との淡い恋物語の妄想に耽るアオイ様にぴったりな四字熟語です」
「はあ？　このぽんこつロボット！」
　アオイ様は、私を蹴ってどこかに行ってしまわれた。あれは、人間誰しもが経験される、思春期、である。今日のアオイ様の体調もすこぶる問題なし。ただ、気になることと言えば、アオイ様の足は大丈夫だろうか、ということである。私には痛覚がないので、蹴られたところで何ともないが、人間はそうではない。
　高等学校から戻られたら、メディカルチェックをしよう。
「グレイ！　この間君が教えてくれた研究資料はとても面白かった。ますます、医者になるために実習を頑張らねば、と身が引き締まったよ！　ありがとうな」
「喜んで頂けて良かったです。リンタ様、来週からも実習を頑張って下さいね」