箱の中のAIロボット

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 スバル様が跳び跳ねながら、私の硬い関節の腕を振り回しておられた。すると、その動きがぴたっと止まった。 「グレイ、ごめんしゃい。うで、いたい?」 「痛くないですよ。私には痛覚はありませんから」 「つうかく? あ! ありしゃんだ!」  今度は私の腕を一生懸命引っ張られた。  幼子の興味は移ろいやすい。先程までの悲しみの感情は、いつの間にか、楽しい感情に移行している。瞳孔に異常なし。  スバル様のバイタルに、今のところ問題なし。だが、要経過観察。 「グレイ、おちっこ」 「この近くにトイレがあります。そこまで頑張って歩きましょう」 「う、うん」  この表情は、苦悶の表情と言っていいだろう。尿意は時に、破滅への道である、と社会人であるリョウヘイ様が言っていた。重要な会議の最中、我慢し過ぎた末の膀胱炎とは、何とも恐ろしいことらしい。 「グレイ、ここで、まっててね、いなく、ならないでね」 「勿論です。さあ、行ってらっしゃいませ」  最近、一人でもトイレに入り、始末が出来る様になったスバル様。人間は、肛門や尿道から排泄物が出るため、後始末をしなければならない。その点、私には排泄もない。 「はあ! しゅっきりー!」 「良く出来ましたね。後は、さしすせそ、たちつてと、を上手に言えれば、初等幼児学校へ入学出来ますね」     
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