箱の中のAIロボット

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「お、サンキュー。今日これから急遽会議でな。うん。旨い。あんがとさん、行って来る」  エイジ様は、ナツキ様と同じ様に、そして、先程の私と同じ様に、スバル様の頭を撫でた。 「スバル様。あのクッキーは」 「グレイ」  やっと目が合ったスバル様。脳活動、ホルモンバランスにやや乱れあり。 「グレイなんかだいきらい!」  スバル様は走って、自室に入ってしまわれた。はて、大嫌いとは。嫌いとは、好まず、退けたい思いを抱くこと、である。大、が付くということは、その思いの規模に比例する。 「あの瞳から落ちる水は、どういう仕組みで落ちるのか、アップデートしておりません」  人工知能ロボットにも、アップデートされていない情報は、いくつかある。 「何故でしょう。瞳の色に関係しているのでは。アオイ様やエイジ様は焦茶色ですが、ナツキ様やスバル様は青磁(せいじ)色。それか、髪の毛の色はどうでしょう。アオイ様やナツキ様は煎茶色で、エイジ様は栗梅(くりうめ)色、スバル様は生成(きな)り色。うむ。これは不可解です。肌の色はどうでしょう。アオイ様は丁子(ちょうじ)色、エイジ様は褐色、ナツキ様とスバル様は桜色と月白(げっぱく)色の混じった色。やはり不可解。一致するものがありません」     
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