箱の中のAIロボット

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 手の付かなかった冷めきったレモネードをしまいながら、あの水について考えていると、私の体内アラートが鳴り出した。 「これは大変です。スバル様!」  施設内の階段には、私専用のスロープがある。一刻も早く着かねばならない。医療用ロボットの手配には時間がかかる。幸い、私は医療行為認定の称号も得ている。  酸素濃度低下、呼吸困難、両方軽度。自室のベッドでもがくスバル様。 「スバル様、横になることは可能ですか?」  (うずくま)るスバル様は、私の言葉が聞こえる様で、ゆっくりと横になられた。 「スバル様、これからネブライザーで吸入しましょう。それと輸液も行います」  喘息持ちのスバル様。幸運だったことは、今日の喘息は軽度であったこと。 「い、や……!」  いつもと違うことは、スバル様が駄々をこねること。 「なりません。悪化したら、死んでしまうのですよ?」  死ぬ、ということを、生きている者は誰も体験したことがないが、少なくとも私よりも、人間であるスバル様の方が心得ておられるだろう。 「か、かまわ、……っ」  咳き込むスバル様。酸素濃度は九六パーセントを保っている。チアノーゼは幸い見えていない。     
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