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「あっ、佐藤先生! 待ってくださいよー!」
「大野先生、今お帰りですか?」
「そうなんです。家に帰るの三日ぶりですよー」
「大変ですね。あ、私は駅方面なので失礼しますね」
「え! ちょ、ちょっと待って!」
「はい?」
「あの、よかったら夕飯、一緒にどうですか?」
「……」
──男性に食事を誘われたのは5か月ぶりだった
「いやぁーまさか付き合ってもらえるとは思いませんでした」
「そんな、食事ぐらいいつでも誘ってくださいよ」
「いいんですか?」
「はい?」
「本当にいつでも誘っていいんですか?」
「……はぁ」
「あの、この後時間ありますか?」
「え?」
「もしよかったら……飲みに行きませんか?」
「……」
『却下』
(!)
『この男、ただいま絶賛3股中。4股目にされちゃうよ』
(……)
「どうですか? 佐藤さん」
「ごめんなさい。明日早いのでこれで失礼します」
「え! あっ、ちょっと──」
運よく通りかかったタクシーに乗り込めた。
「……はぁ」
(また出会いをひとつ潰してしまった)
佐藤初実、30歳。職業、医師。
勤務体制が不規則なため、男日照り記録もっぱら更新中。
(いや、職業云々が原因じゃないよね)
世に数多ある忙しい職業の人たちの中にはちゃんと恋愛してちゃんと結婚している人はいっぱいいる。
私の場合、男性との出会いが決してないわけじゃない。
わけじゃないの、だが──……
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